メタバースとAIなどのWeb3技術が医療の未来を切り開く!医療業界の抱える問題とは?

医療業界では現在、人手不足、医療従事者の過重労働、患者ケアの質と地域格差など、医療現場には改善すべき課題が存在していることをご存知でしょうか?
問題として挙がっていても、なかなか改善するための施策を打ち出せないのが現状でした。

しかし、近年AIやメタバースなどWeb3関連の先進技術が進歩し、医療業界の抱える課題を解決する可能性を秘めています。

これらの技術は、医療従事者の業務を支援するだけでなく、患者自身のケア体験を根本から変える力を持っています。

本記事では、メタバースとAIを活用した「医療現場の課題の解決方法」「患者中心の医療の提供方法」を解説していきます。

最後まで読んで頂けたら、幸いです。

目次

メタバースとAIが医療を変える!医療現場が抱える課題とは?

時代の変化に伴い医療現場では、医療従事者の人手不足、医療費の高騰、医療格差など様々な問題が発生しました。

そこで2024年1月に「医療の働き方改革」として、先延ばしになっていた法改正に伴う規制が開始されたのです。

では、具体的にどのような問題を抱えているのでしょうか?優先的に解決すべき課題は、以下のようなものが挙げられます。

  1. 人手不足と医療従事者の過重労働
  2. 医療の地域格差
  3. データ管理と情報共有の課題

1.人手不足と医療従事者の過重労働

世界保健機関(WHO)によると、2023年には世界的に医療従事者が不足している状況が続いており、特に看護師や一次ケアを提供する医師の不足が深刻です。

日本では、厚生労働省の調査によると、少子高齢化の影響を受け多くの病院で医師や看護師の不足が報告されており、これが過重労働につながっています。

医療従事者の不足は、患者一人ひとりに割くことのできる時間の減少、医療ミスのリスクの増大、そして医療従事者自身のストレスや燃え尽き症候群につながっています。

実際に日本看護協会の全国調査によると、2021年度の看護師の離職率は11.6%でした。これは過去10年で最も高い数値となり全職種の平均離職率(11.1%)も上回っています。

2.医療の地域格差

医療における地域格差とは、人材、施設や設備など地域によって医療サービスの質に大きな差が生じてしまうことです。
その中でも特に課題として挙げられるのが、医療従事者の偏在です。

人口10万人当たり医師数(2020年)で実際のデータを見てみると、医師の数が北海道全体で262.8人である一方、札幌市では353.6人となっています。

愛知県全体では236.6人である一方、名古屋市では332.1人となり中核都市で医師の数が多い傾向にあります。
また、都道府県単位で見てみても、最も多い徳島県で338.4人、最も少ない埼玉県では177.8人となり両者には2倍弱の差があります。

また、東京圏の人口集中に伴い、医療従事者の数も集中しているようです。
医師数の偏りは、一概に都市部、地方というだけでなく様々な要因が考えられます

3.データ管理と情報共有の課題

厚生労働省の「医療DXの推進に関する工程表」によると「電子カルテ情報共有サービス」は2024年度から進められる予定です。
導入することで、業務の効率化、情報共有することでの診療制度の向上などのメリットがあります。

その一方で、運用主体のコスト負担の課題、個人情報の流出や消失のリスク、システムエラー時の対応方法など様々な課題を抱えています。

メタバース、AIを活用した医療現場が抱える課題の改善策

1.人手不足と医療従事者の過重労働の改善策

AIによる診断支援と業務自動化

AI技術を用いた診断支援システムは、画像診断や病歴の分析を自動化し、正確な診断を迅速に提供します。

例えばグーグルのDeepMindが開発したAIは、眼疾患の診断において、専門医と同等以上の精度を示しました。

電子カルテの入力や患者情報管理などの日常業務をAIが自動化することで、医療従事者の負担を軽減し、より重要な患者ケアに集中できるようになるでしょう。

メタバースによるバーチャル医療サービス

メタバースプラットフォーム上でのバーチャル医療施設を設立し、遠隔地にいる患者がバーチャルリアリティ技術を通じて医療従事者と対話できるようにします。
実際に株式会社mediVRでは、VR技術を活用し姿勢バランスや認知処理機能を鍛えるリハビリテーションをサポートが展開されています。

これにより、物理的な距離の制約を超えて医療サービスを提供し、医療従事者の地理的偏在問題を緩和します。

Web3技術による医療データの分散管理

ブロックチェーンなどのWeb3技術を活用して、患者データの安全な分散管理システムを構築します。
これにより、患者情報の共有が容易になり、患者データのアクセスと管理にかかる医療従事者の時間と労力を削減します。
同時に、データのプライバシーとセキュリティを保証し、患者と医療提供者間の信頼を強化します。

メタバース、AIの技術を活用することにより、医師の業務の軽減を可能にし、過重労働の問題の解決につながります。
医療従事者の労働環境が改善されることにより、患者へ提供する医療の質の改善にも繋がっていくでしょう。

2.医療の地域格差の改善策

メタバースによる仮想医療センター

メタバースを活用した施策の1つとして、メタバースプラットフォームを応用した仮想医療センターの設立です。

これにより、地理的に離れた場所に住む患者もバーチャルリアリティを通じて専門医療従事者の診断や相談を受けることが可能になります。

2024年現在、順天堂大学医学部附属順天堂医院では、「順天堂バーチャルホスピタル」を構築しています。
目的として、患者さんや家族が来院前にバーチャルで病院を体験できる環境作りメタバース空間での活動を通じて、メンタルヘルス等の疾患の改善を図る目的としています。

仮想医療センターでは、遠隔診療、健康相談、教育プログラムなどを提供し、地域による医療サービスの格差を縮小することにつながるでしょう。

AIによる診断支援と資源配分

AI技術は、現在医療の分野で活用されています。特に大腸内視鏡や胃カメラといった、消化器内視鏡分野での活用が多く、すでに製品化されているものもあります。
医師とAIによる診断をすることで、ダブルチェックの役割を果たし、医師の精神的重圧の軽減や見逃し防止の効果が期待できます。

実用化されている分野の特徴としては、患者数と検査数が多く、画像が集まりやすいものになります。AIが学習する画像が多いことが学習精度の向上に繋がっているようです。

3.データ管理と情報共有の課題の解決

ブロックチェーン技術は、ブロックチェーンやその他の分散型技術を活用して、患者データの安全な共有とアクセスを可能にする医療データネットワークを構築します。

このネットワークは、医療情報の透明性と信頼性を高め、患者のプライバシーを保護しながら、医療従事者間での情報共有の促進を可能にするでしょう。

実際にエストニアでは国民全員の健康記録がブロックチェーン上に保管されており、患者と医療提供者が必要な情報に安全にアクセスできるようになっています。

また、世界最大手の製薬会社であるSanofiでは、ブロックチェーンを活用し、医療と患者の情報を信頼性、透明性を確保しつつ管理する方法が検討されています。

この他、MyHealthMyDataのブロックチェーンベースの健康情報交換プラットフォームがあります。
患者が自分の健康データをコントロールし、必要に応じて医療提供者や支援団体と共有できるようにすることで、パーソナライズされたサポートの提供を可能にしています。

ブロックチェーンを活用したデータ管理の施策は、医療情報の信頼性と透明性が保たれ、効率的な医療提供を可能にすると期待されています。

メタバースとAIが医療を変える!がん患者が抱える課題とは?

1.精神的・心理的な孤独感と不安

がん患者は、家族や友人との日常的な交流が限られ、孤独感や不安を強く感じることがあります。
さらに、治療の副作用や将来に対する不確実性がこれらの感情を増幅させているのが現実です。

あるがん患者は、治療による体調の変化と、家族に心配をかけたくないというプレッシャーから、孤独感を強く感じていました。その結果、精神的な負担が増大し、治療へのモチベーションが低下したと話しています。

アフラック生命保険株式会社が2022年8月に実施した「がん患者の悩み・不安に関する実態調査」によると、多くのがん患者が漠然とした悩みを抱えていることがわかります。
そして、その悩みが身体的・医学的なものにとどまらず、心理的・精神的、さらには就労や経済面など多様化していることが明らかになっています。

2.限定された医療情報へのアクセス

がん患者は、自身の病状や治療オプションに関する情報を得るための機会が非常に限られています。これにより、自分の治療に対する理解が不足し、不安が増大しているのが現状です。

実際にアフラック生命保険株式会社が2022年8月に実施した「がん患者の悩み・不安に関する実態調査」によると、がん患者の2人に1人(約6割)が正しいがん情報にたどり着けない「がんの情報迷子」になっている現状があります。

また、がん患者の約9割が「自分に合う情報にたどり着けることでがんに関する不安は軽減できる」と回答しており、数ある情報の中で、いかにその患者に合った情報を得られるかが、効果的に治療を受けるために重要になるのです。

3.日常生活や就労復帰への不安

がん患者が就労を通して日常生活へ復帰することは、多くの患者にとって大きな課題です。
厚生労働省が令和2年に調査した「がん患者・経験者の治療と仕事の両立支援施策の現状について」では、がん診断後、退職離職した人が20%います。
さらにその中で、再就職、復業した人は20%に留まっています。

このデータからもわかるように、がんと診断されてから、就労をしたくてもできないというのが大きな課題です。

メタバース、AIを活用したがん患者が抱える課題の改善策

1.精神的・心理的な孤独感と不安

がん患者の精神的・心理的な孤独感と不安を軽減させる施策として、メタバースを活用することが大変有効です。
現在、がん患者支援団体5years(ファイブイヤーズ)がんサポートコミュニティーClub CaNoW(クラブカナウ)などがん患者のためのコミュニティが存在します。
しかし、長期入院や自宅療養、開催場所が遠方などの理由で、なかなかコミュニティに参加することが難しい患者も多く存在しました。

メタバースは病院や自宅にいながら、メタバース空間を利用し患者同士や医療従事者との交流の場を提供することができます。今まで以上に気軽にコミュニティへの参加を可能にします。


ユーザーがアバターを介してがん患者自身や家族が中心と互いに交流し、共感や支援を得られるコミュニティを形成することで、リアルな交流の代わりとなり、患者の孤独感を軽減することができるでしょう。

2.限定された医療情報へのアクセス

メタバース内でのバーチャルヘルスケアセンターの設立

メタバースプラットフォーム上にバーチャルヘルスケアセンターを設置します。
このセンターでは、利用者がバーチャルリアリティ技術を通じてリアルタイムで医療専門家に相談できるほか、健康教育セミナーやがん患者のためのコミュニティに参加することが可能になります。

メタバース空間を利用することで、地理的障壁を超えて、幅広い医療情報とサービスへのアクセスすることができ、利用者が必要とする情報を容易に得られるようなるでしょう。

AIによるパーソナライズされた医療情報提供

がんの情報迷子になっている患者や家族が多い問題を抱える中で、AI技術を活用することが最も効果的です。
なぜならAIアルゴリズムは、ユーザーの健康記録、興味、検索履歴などから学習し、最も関連性の高い医療情報、予防策、治療オプションを提案することができるからです。

実際に、AIを活用したがん患者ごとに最適治療を提供 がん研究会などがシステム開発が開始されています。

AI技術を活用して、個々の利用者の健康状態やニーズに合わせた医療情報を提供することで、一般的な情報から個別のニーズに合わせた具体的なアドバイスまで、多様な医療情報へのアクセスが改善されます。

3.日常生活や就労復帰への不安

仮想リハビリテーションとメタバースによる支援プログラム

メタバースを活用して、がん患者が自宅からでも参加できる仮想リハビリテーションプログラムを提供します。
このようなプログラムでは、VR技術を使って患者が仮想空間で身体活動を行い、日常生活で必要なスキルや運動能力を養うことが可能になります。

実際にフランスのスタートアップであるOncomfort社は、VRを使用したデジタルセラピーを提供しており、がん患者の痛みや不安の管理に役立つプログラムを提供しています。
このようなアプローチは、患者がリハビリテーションをより身近でアクセスしやすいものと感じさせ、日常生活への復帰を支援します。

AIによるパーソナライズドサポートとキャリアプランニング

AI技術を活用して、患者の健康状態、能力、および職業的興味に基づいたカスタマイズされた職業復帰プランを提供します。
AIは、患者が抱える不安を理解し、彼らに最適な支援を提案することができます。

具体的な事例として、人工知能診断支援システムWatson for Oncologyは、がん治療の意思決定支援ツールとして活用されています。
同様のAI技術を職業復帰支援に応用するプロジェクトが研究段階で進行中であり、実現すればAIが患者の状況を分析し、復帰プログラムや職業訓練を最適化することができるようになります。

まとめ

これまで解説してきたように、医療従事者やがん患者など医療分野における課題は様々あります。
しかし、メタバース、AIなどWeb3関連技術を活用することにより、これらの課題を解決できる可能性を秘めています

少子高齢化を迎え、医療業界でも問題が顕著になっていく我が国にとって、早急に課題を解決していくことが、明るい未来へと繋がっていくことでしょう。

最新の技術を活用し、医療従事者が働きやすく、私達が安全で安心した医療を受けることができる医療業界になることを望んでいます。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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